「シンゴジラ」と「君の名は。」は、何が違うのか。 (ほぼネタバレなし)
この二つにはある明確な違いがあります。この二つの作品は、いまの50代のオタクと、40代のオタクの行動パターンや心理の違いが作品にモロに出ているのです。ふたつの作品のとある違いについて少しお話したいと思います。ほぼネタバレはありませんので、まだ観てない人もご心配なく(でもできればすぐに映画館にいって両方見て欲しいと思ってます。)
シンゴジラは、オタク達がみんなで力をあわせてゴジラを倒します。コミュ障っぽいオタクがたくさん出てきますが、すぐに仲間になれるんです。これは、かつてのガイナックスを思わせる描写です。
それに対して、君の名は。では、自分の身に起きていることを最後まで秘密にしています。主人公は、普段はリア充の様な性格をしていますが、心のなかにオタク趣味に相当する秘密を持っています。そして、新海さんは、1人でアニメを作った人です。同世代のロマのフ比嘉さんなんかもそうで(むしろ第一人者)、1人でアニメを作るクリエイターが多い世代なのす。デジタルの恩恵があったとはいえ、僕らの世代には1人で作るしかなかった理由があります。(クオリティはともかく、わたしも15分のアニメを1人でつくりました…)
なぜ50代のオタクと40代のオタクでは、こうも違うのか?
この傾向の違いは、かなり明確に
【連続幼女誘拐殺人事件】の前後で別れるのです!
あの事件以降、オタク=性犯罪者というレッテルがはられるようになりました。正確には、あの事件より前は、オタクという呼び方もあまり定着していませんでした。「なんかマニアって濃くて一般人から理解されてないよねぇ」ってのは、アオイホノオなどを観てもわかりますが、迫害はうけていなかった。そして、オタクであっても自分に誇りを持っていた時代でした。
僕らは、それはもう細心の注意をはらって、オタクであることを隠しました。どのくらいヤバかったかは、当時中・高校生だった人間にしかわからないと思います。思春期のオタク趣味を人と語り合うべき時期に、ぼくらはそれが出来なかったのです。
だから、作ったのです。
完璧な鉄壁の壁に囲まれた秘密の場所を。
それが、ぼくらの世代が、世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランドに心酔する理由です。(あと、村上春樹が好きだとか言ってると、オタクと思われないという利点もあったりします。)心の中に構築した、人には言えないオタク趣味の世界が脳内にあり、あの作品に強く惹かれる理由になっています。(たぶん、これが後にセカイ系と呼ばれるようになったのだと思います。)
僕らの世代のオタクは、隠れオタクなのです。隠れキリシタンの様に、ひっそりとオタク信仰をつらいぬいていたのです。
隠れオタクの時代ですが、エヴァが大ヒットして、一般人もアニメを普通に観られるようになったことで迫害は軽減されていきます。いまの50代のオタク達がたちあがり、オタクへのレッテル貼りを払拭してくれたのです。当時の迫害に対して岡田斗司夫さんは、実際に戦ったというような話をされています。
ちなみに、当時、僕はオタクと思われないようにエヴァを見ていません。(ずいぶんあとになって観ました。)エヴァには、50代からみた40代のオタクが描かれていた様に思います。ぼくらと同世代のホリエモンが、「ガイナックスといえばオネアミスの翼だ」と言ってる理由は、オタク的な要素が分かりにくい(バレにくい)作品であり、事件前の作品だからです。トップをねらえ!なんて見てるとオタクだと思われるから観ないか、隠れて観ていたのです。ナディアはNHKだったのでまだ許されていたりします。パトレイバー劇場版、オネアミスの翼、ジブリ作品、この辺りは、性犯罪を助長しそうな要素が少なくギリギリオタクではないと考えられていましたので、僕らの世代の隠れオタクに絶大な支持があるわけです。むしろメジャー作品ばかりで、ぜんぜんオタク作品でもないとすら思えますが、 アニメを見るだけでオタクだったのですから、無理もありません。
シンゴジラ(庵野監督)の感想を、50代のオタククリエイターが多く語っていますが、40代のオタククリエイターが、同世代の成功者である新海誠監督を語ることはほとんどありません。僕らの世代には、いまだに、50代のオタクのようなコミュニティは、ほぼ存在しません。実家に帰って同窓会に出席してもアニメの話など出ません。ちなみに30代のオタクになると、ぼくらほど、事件の精神的被害を受けていません。彼らは、再びネット上の同人サークルという形でオタクのコミュニティを築いています。また、オタクであることを僕らほど隠していません。
君の名は。を見ていると、軽快な娯楽作品になっているにもかかわらず、心がザワザワします。あの辛かった隠れオタク時代を思い出すからでしょうか。
50代のオタクの人は、新海誠を理解できないといいます。当然です。知識として理解しても、ほんとうにあのつらい時代を過ごしたわけではないからです。逆に同世代である僕らは、痛いほど理解できて、辛すぎたりします。
ほんとうに新海誠を純粋に楽しめるのは30代より若い世代ではないでしょうか。
この話に共感する隠れオタクのみなさん。1973年生まれ前後の皆さん。ぜひ、「君の名は。」を観て、なにか語りましょう!もう、とっくに隠れオタクでなければならない時代は終わったのです!
いや、「君の名は。」の大ヒットによって、ついに僕らは救われたのかもしれないのですから…。
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