【映画レビュー】クリエイター必見!イラン映画、人生タクシー(ほぼネタバレなし)

■映画データ

タイトル 人生タクシー 

監督 ジャファル・パナヒ

キャスト  主演? ジャファル・パナヒ

ジャンル ドキュメンタリー

解説 厳しい報道管制下にあるイランでタクシーの運転手をする映画監督自身によるドキュメンタリータッチの映画。すべての物語がタクシーの中からの撮影によって展開する。2015年・第65回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞。

■感想

※まだ一般公開されていない試写会での鑑賞なのでネタバレなしで感想を書きます。

映画の内容にも少しふれてますが、重要なネタバレはしてませんので、この感想をみて興味を持った人はぜひ映画館へ足を運んでみて下さい! 4月15日から公開のようです!

[人生タクシー公式サイト]

この映画、イランの映画なのですが、ちょっと変わった映画です。

ずっとタクシーの中だけで話が展開します。

「いろいろな乗客がタクシーを乗り降りする中で、運転手との会話の中にイランの社会情勢を垣間見ることができる」という構成になっています。しかも、運転手が映画監督で、乗客は運転手が監督であることに気がつくケースもあります。その上で、「さっきの乗客は役者さんですか?」と言った会話が出てきて、ドキュメンタリー風のフィクションなのか、本当にタクシーで偶然会った人を撮ってるだけなのかわからなくなります。

 ちなみに、イランのタクシーは相乗りがOKのようで、すでに乗客が乗っていても、次の乗客が気軽に乗ってきます。他の乗客を乗せたくない場合は、貸し切りを宣言しないといけないようです。 

そういった、イランの特殊な事情が分かる映画なのですが、単にイランの現状を伝えるだけでなく、映画としての面白さにあふれています。大笑いするほどのコメディではありませんが、ニヤニヤがとまらないような、小さい笑いが沢山しこんであります。

そして、もうひとつの特徴なんですが、情報規制の厳しいイランにおいて、「多くの人が映画を撮りたいと考えている」という設定になってます。本当にそんな人が多いのか、映画用に誇張してるのかはわかりませんが、いろんな登場人物が映画について語っています。

でも、この映画で描かれる情報規制ってイランだけの話では無いんですよね。実は日本のTV等でも、おなじような事はあるんです。最近のTVは、驚くほどの自主規制で、創作の幅が狭まってしまうことがあります。政治的な規制とは違うかもしれませんが、表現の自由は油断するとどんどん規制されてしまうものなのです。

情報規制の厳しいイランだからこそ、そういった、モノづくりへの情熱や本質的な表現の追求について、より強く思いを巡らせてしまう映画になってます。

 そんなこの映画は、当然のようにイランでは上映禁止になったそうです。

イランで上映禁止されても、この映画をつくりきって世界の人々に届けることが出来たことに対して、監督や関係者に拍手を贈りたい気持ちになりました。

イランの情報管制と戦って完成したこの映画ですが 結局この映画はイランでは見れないんじゃ意味ないのでは? と思ってしまうかもしれません。 

いやいや、きっとイランの人も逆輸入の海賊版でこの映画をみてると思います。(映画作中にもそれを示唆する内容があります)

 あと、気のせいかもしれませんが、イランの日常風景は、どことなく日本と似てますね。なんでかわかりませんが、他の外国よりもすごく親近感を感じました。IPhoneやiPadが普通に使われているのも印象的でした。

そんな、いろいろと厳しい状況で作られている映画ですが、この映画が、イランの厳しい現実だけでなく、厳しい中でもたくましく生きる人々を描いている部分にこそこの映画が作られた意義があるのではないかと思いました。

 たぶんイランは近いうちに変われるんじゃないかと思うんですよね。 この映画はそんな未来を感じさせる映画でもありました。

 

この映画のおすすめ度は『★★★★☆』です!


[これは映画ではない2015 主演: ジャファル・パナヒ]